幼少期の体験や学びがその後の人生に大きな影響を与えます。グローバルスカイ・グル ープが展開する教育事業は、まさにこの視点に立って、幼少期の体験や学びを変えたい、 成長してからも学びの姿勢を子供たちが好奇心に導かれるままに学んできたように(Play and Learn)戻したいという思いで取り組んでいます。本著においては、私たちが手掛けるオセアニアにおけるアーリーラーニング事業をご紹介しつつ、幼児教育から高等教育までに日本の学びに対する選択肢をお示ししたいと思います。
さて、2019年末に流行が始まった新型コロナウイルス(COVID-19)は、2020年3月11 日にはWHOによるパンデミック宣言となり、これを受けて世界経済と人の移動は大きな制限を受けました。予測困難で不確実なVUCA時代と言われはじめたところに、COVID-19によって、世界はさらに不確実性に満ちることになり、今まで当たり前と思っていた社会システムは完全に機能不全を起こし、経験したことのないような生活・仕事環境において、個人の生き抜く力が試される状況にあります。自分の今後の生き方/働き方について考える機会は多くなり、サステナブルな社会を創り、現状を根本 から見直すグレート・リセットの好機ともいえます。私たちはこの社会環境変化と需給調 整局面に迅速かつ柔軟に適応できるか、私たち自身、そして自分が属するコミュニティで 「自ら未来を切り拓く力」が問われています。
私が代表を務めるGlobal Sky Education Group(GSE)は、ラーニング・トランスフォ ーメーション(LX)のリーダーとして、予測困難で不確実なVUCA時代に、自ら学び成長し社会に貢献できる「未来の人材」を育てる「学び」をデザインし、唯一無二のラーニング ・エクスペリエンス(学習体験を通じた成長機会)を生み出そうと事業活動を行っています。オーストラリア、ニュージーランドでは、日本の幼稚園・保育園一体施設(こども園 )にあたるアーリーラーニングセンターを10拠点運営しており、日系最大規模のオペレーションで展開しています。子供たちが遊びながら学ぶのはご存じのことと思いますが、そ の学び方を高学年・大人も同じようにやってよいのではないか、というのが、GSEの普遍 的な考えとなります。
また、コロナの前後を問わず、①AI・デジタル・自動化による職業消失、②AI時代・DX化への対応、③グローバル体験の充実といった社会的課題に私たちは直面していますが、まさに人間にしかないソフトスキルの向上、デジタル・リテラシーの向上、オンラインによるグローバル体験の充実が求められ、With/Afterコロナ時代の3つの社会的課題に対する教育がどうあるべきかを考えてまいりました。世界の先端教育と日本ならではの教育潮流を融合し、企業・教育機関様向けに教育プログラムを研究・開発・導 入することを通して、全ての世代の方のあらゆるステージの成長を支援いたします。創造的な学びをもたらすクリエイティブ・ラーニング手法を深化させ、オリジナルに加えてグローバルな有力教育機関の知見を多方面にわたって採り入れ、コレクティブな学びのデザ インを提供することにあります。
子供たちが試行錯誤を繰り返し遊びながら学ぶように、好奇心をベースに「さわり、つ くり、楽しみ、協働し、発表し、共感する」、こうした自己実現を促す本質的な学びのプロセスにバリュー・プロポジションを置いています。GSEが提供する学びは、サステナブ ルな社会を創る基礎となり、SDGsで掲げられるさまざまな社会的課題の解決、イノベーションやデジタル・トランスフォーメーションといった社会が求める新しい価値の創造を通して、自ら学び成長する社会に貢献できるクリエイティブな未来人材の育成につながります。 日本には素晴らしい教育システムもある一方、世界的な潮流から見れば劣る部分もあり ます。衰退と疲弊する日本を中から元気にするのは教育です。人生は失敗の連続ですが、 失敗を真摯に受け入れ、そこから困難を乗り越えようともがくからこそ、チャレンジ精神 やレジリエンス(立ち直る力)が養われると思います。遊びを通してそれを学び、教わるということをしてきたのに、どこかで忘れてしまったようです。GSEは、そのような機会を作るのが私たちの役割だと考えます。
また、想像力(イマジネーション)の欠如、読書 をしていない、わかりやすいものに食いつく、自責で成し遂げた経験がない、といった人 材を目にすることが増えていないでしょうか?私たちは「自ら未来を切り拓く力」が問わ れておりますが、人類は根源的に「創造力」(クリエイティビティ)と「想像力」(イマ ジネーション)を持っています。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)によっ てリアルな体験価値は益々高まると思います。人も企業も、その競争の源泉となる創造的 活動を行うことに尽きると信じてやみません。 創るという活動は、ものづくりだけだはありません。新たな商品やサービス、コミュニティな仕組み、社会への新たな価値やニーズに応えるソリューションを創るという意味が あります。創造社会においては、記憶偏重型・知識習得型からの脱却が大きな潮流で、環境リテラシー、デジタルリテラシー、グローバルマインド、金融リテラシーといった学際 的な領域も広がり、コミュニケーション能力、クリティカルシンキング(多面的思考)、 創造力、コラボレーションの4つの非認知能力は、従来の読み書きそろばんと並ぶスキル として世界的に必要性が認識されており、ETONXでも養われるコアスキルになっています 。
社会での成功との関係についても学術的な研究が進んでいます。創造力と想像力に長けた人材が多く活躍する社会になり、クリエイティブリーダーと呼ばれることもありますが 、決して組織を率いるのがリーダーというのではなく、自らのキャリアや人生を引っ張る という意味でのリーダーシップととらえてほしいと思います。 グローバル化が進む中、日本企業の海外進出や日本の観光客増加といった国境を越えた財・サービス・人の移動が加速してきました。コロナで一時停滞している状況ですが、中長期的なスーパートレンドとしては、再びグローバリゼーションは加速します。日本国内に目を向けると、少子高齢化と労働人口の減少に直面する中で、外国人労働者に頼る状況が続いていました。日本にいながらしてグローバルな環境で暮らし仕事をする状況になっ てきたのです。かつては、英語が話せればグローバル人材と呼ばれる時代もありましたが 、英語はあくまでもツールであり、本質はコミュニケーション能力や異文化理解力を持つことにあります。
オーストラリアは、もともと移民が国を作ってきたもいえ、常にグロー バルな社会環境にあります。日本人の活躍の場が世界に広がるのはもちろんのこと、日本国内のグローバル化も進んできますので、そのような多様なバックグランドを持つ人々が 共生して豊かな社会をつくるためには、日本にいながらしてグローバル人材、つまり、コ ミュニケーション能力が高く、このような人材になるためにはどのような学びが必要にな ってくるでしょうか。
わたくしのグローバル教育の原点は、幼児期を過ごした米国カリフ ォルニア州にあります。当時は4-5歳でしたが、スタンフォード大学Bingスクールで唯一の 日本人児童として通学しました。同スクールは、教育学部の試験校という位置づけにあり 、世界各国の子供たちが一緒に遊んでその発育を見守るというものでした。GSEのメンバ ーは、世界各国から集っていますし、完全アウェーを味わった共通の原体験を持つように思います。決して語学が堪能であったわけでもありませんが、多様性・異文化を当たり前に考え、相手を尊重し受け入れる、傾聴する、必要な場面では主張する、このようなスキルが養われたに違いありません。
ここでは、未来を創る人材、地球市民として社会貢献を通じて自己実現を図っていく、自らの好奇心を使って常に学び続ける人が求められる今日、当社グループが手掛けるライ フロング・ラーニングの中で、人生ももっとも左右するであろう幼少期の体験と学びを提 供するアーリーラーニング事業の考え方や実績が、日本のこれからの学びへの示唆になることを祈っております。
目 次
国際色溢れるインターナショナルな環境
国際的に競争優位な幼児教育システム
欧米諸国よりも経済的な生活コスト
幼児の脳の発達に有効な英語学習
子どもたちはみんなオーストラリアが大好き
クリエイティビティが向上する
自己肯定感が高まる
新しいスキルが身に付く
日本への感謝の想いが深まる
「褒めた理由を伝える」
「リスクをとらせる」
「子ども自身に判断をさせる」
「お手伝いをさせる」
「子どもの好奇心を解放する」
チェックリスト
日本と西洋の子供たちとの比較
高まる”遊びと幼児教育”の重要性
「2035年」の世界で求められるもの
オーストラリアの幼児教育が注目されている理由
政府による教育・サービス品質の確保
幼児教育制度の発展とNQFについて
子どものアイデンティティ形成に重要な「帰属・存在・生成」
政府によるチャイルドケアサポート
日本の幼稚園・保育園との違い
子どもの個性とチャレンジを大切にするアプローチ
オーストラリアの幼稚園や保育園の仕組み
その他のチャイルドケアサービスの種類
オーストラリアの義務教育・高等教育
年代別の教育制度と義務教育について
プライマリースクール(小学校)が始まるタイミングは?
National Quality Standard
① NQSを構成する7つの領域
② 評価制度と品質の格付け
③ 各Quality Areaについて
EYLF(Early Years Learning Framework)
① EYLFとは
② 中心となるコンセプト
③ フレームワークの構成要素
④ 5つの原則
⑤ 実践プロセス
⑥ 期待される学習成果
Certificate Ⅲ(概要)
① 概要
② 学習コースへの参加要件
③ コースに含まれる学習項目
Diploma(概要)
① 概要
② 学習コースへの参加要件
③ コースに含まれる学習項目
オーストラリアにおけるチャイルドケア事業発展の背景
① 社会インフラとして位置付けられたチャイルドケア事業
投資観点から見るチャイルドケア事業
① チャイルドケア事業の概要
② 投資家がチャイルドケア事業買収へ投融資を行った際の投資フロー
③ オーストラリアにおけるリース担保事情
④ 買収資金貸付、担保設定、利息支払いフロー
⑤ チャイルドケア事業買収契約と譲渡のフロー
⑥ チャイルドケア事業に関わるメンバープロファイル
⑦ 運営中のチャイルドケア事業のご紹介
⑧ チャイルドケア事業の主なリスク
業界の現状と今後の見通し
① チャイルドケアビジネスの現状
② 市場に影響を与え得る主な外部要因
③ 業界における企業形態
④ 需要の決定要因
⑤ ビジネスを成功させるためのポイント
⑥ 業界の今後の動向
Play & Learnとは
Play& Learnの教育アプローチとその適用事例
レッジョ・エミリア・アプローチの特徴
レッジョ・エミリア・アプローチの哲学
オーストラリアのレッジョ・エミリア
レッジョ・エミリアで用いられる原則とその適用事例
THRASSとは
THRASSの有効性とその適用事例
親子留学プログラム「Hello Kids」
「Hello Kids」とは
現地センターのご紹介
センターでの1日の過ごし方
先生の子どもへの接し方に関する日本との違い
コレクティブな遊びと学び
現地でのおすすめアクティビティ
Triple Pとは?
ポジティブな子育てのための5つのステップ