Photo | ©Tourism and Events Queensland
オーストラリアで保育士として仕事をするためには、Certificate III in Early Childhood Education and Care、または、より専門性の高いDiploma of Early Childhood Education and Careを取得していることが必要です。ここでは資格の学習コースを提供しているTAFE(Technical and Further Education)の例を参考に、それぞれの内容についてご紹介していきたいと思います。
尚、TAFEとは政府が運営する教育機関であり、美容やデザイン、保育、会計、ビジネス、ITなど、さまざまな職業分野の教育を提供しています。大学では一般的に幅広い理論や知識を学ぶことができますが、TAFEでは特定の職業スキルに焦点を当てて学習することができるのが特徴のひとつです。
CERTIFICATE III IN EARLY CHILDHOOD EDUCATION AND CARE
① 概 要:
CertficateⅢのカリキュラムは、保育士として働く上で基本となる内容をカバーしています。子どもたちの安全と、有意義な教育・保育サービスを提供するために必要なスキルを身につけることができます。体系的な教育理論の学習と実践を通して、以下の内容を学ぶことができます。
乳幼児の保育及び健康と安全のサポート
適切な栄養管理とポジティブな食事体験の促進
政府認定の学習フレームワークの適用
遊びや学習を通して、子どもたちの総合的な成長をサポート
危険察知とその対応方法
緊急時の応急処置
異文化への理解促進
また、上記に記載した教育学に関する内容以外にも、プロフェッショナルとしての意識や幼児教育へのパッション、コミュニケーションや対人関係スキルなど、仕事に従事する上で大切なこれらについても学ぶことができます。
このCertificate III in Early Childhood Education and Careの修了者は、幼児教育者として仕事をすることを政府より正式に認められるとともに、First Aidの証明書を取得することができます。
また、この資格をベースとして、更に高い専門知識を身につけることができるDiploma of Early Childhood Education and Careや学齢期の子どもたちに関する教育スキルを身につけることができるCertificate IV及びDiploma、教育サポートに関するCertificate IV及びDiploma、Bachelor of Education Early Childhood(幼児教育の学士号)など、様々なキャリアアップの道につなげることもできます。
マーケットの動向に目を向けると、ロングデイケアを利用する子どもたちの数は2012年から18%程増加しており、この傾向は2021年も続くと考えられています。
このように市場のニーズの高まりと共に、学位レベルの資格を持つ教師の需要も高まっており、オーストラリアで幼児教育の仕事に興味と熱意を持つ方にとってはポジティブな状況が続きそうです。
学習期間中には、Early Learning CentreやChild Care Centreなど幼児教育の現場でのワーク・プレースメント(実践型学習)を行う必要があります。
このワーク・プレースメントは、座学だけでは体験できない実際に起こりうる様々な状況への対応スキルを磨くための機会として設けられています。政府により認可を受けている企業の施設において、合計120時間のワーク・プレースメントを修了が学習規定により義務づけられており、こうすることで机上の知識だけではなく、体験型学習を通じたより実践的なスキルを身につけることができるのです。
尚、このワーク・プレースメントを行う環境はTAFEにより提供されるものではなく、ご自身で手配をして頂く必要があります。ただし、これらのステップに関するサポートやガイダンスもTAFEから提供をされているので、心配はご不要です。
また、TAFEのキャンバスで学習を行う学生には、卒業後に就職サポートを受けることができます。ご自身が希望するセンターなどを考慮された上で、TAFEからの推薦を受けることが可能です。
② 学習コースへの参加要件:
この学習コースに参加するには、下記の条件を満たしている必要があります。
英語の読み書きと会話ができること
基本的な計算能力
プロフェッショナルとしての高い意識を持っていること
高いモチベーション
忍耐力と献身的な姿勢
幼少期の教育に対するパッション
また、幼児教育の現場においては身体的な活動を要する場面も多く、重いものを持ち上げたり、CPR(Cardiopulmonary Resuscitationと呼ばれる床に膝をついて行う緊急時の応急処置作業)を行うために必要な体力や柔軟性が必要です。
この際、床に設置された成人と幼児のマネキンに向かって2分間のCPRを途切れることなく行うことができるだけの身体能力があるかどうかが問われます。また、生命に危険が及ぶ可能性のあるような緊急事態に即座に適切な対応ができるかどうかも、評価の対象項目となります。これらの身体的要件を満たすことができない場合は、このコースを修了することができません。
また、このコースを修了するためには、以下の条件を満たしていることが必要となります。
ご自身で行うリサーチや評価プロセスのために必要なインターネット通信環境
ワーク・プレースメントの承認を受ける前に、州のWWCC(Working With Children Check)を受けていること
ワーク・プレースメントに関連したタスクや活動を行うためには、手で物を持ち上げたりその他の身体的な活動が含まれるため、十分な身体能力を有していること
このコースには、現場での教育者に必要な応急処置に関する学習内容が含まれていますので、指定されたTAFEの施設において応急手当の実技を行い、複数の状況を想定したシミュレーションにおいて、6分間のCPRを行うことができる身体能力が求められます。
③ コースに含まれる学習項目:
幼児期の子どもたちの成長の総合的なサポート
子どもたちの遊びや学びを促すための体験の提供
子どもたちに関する理解とその実践
幼児教育における法的・倫理的側面
危険な状況の察知と対応方法
緊急時の応急処置
職場環境における健康と安全管理
アボリジニ及びトレス海峡諸島民文化への理解促進と保護
異文化対応スキルの向上
子どもたちの健康と安全の確保
保育活動の実践
健康的な食事の管理
乳幼児のケアの仕方
子どもたちとのポジティブで敬意に満ちた関係性の構築
認定された学習フレームワークの活用と実践
子どもたち自身の世界観とのつながりの促進
幼児教育及び保育を行うための適切な家族との連携
業務プライオリティの整理
Diploma of Early Childhood Education and Care
① 概 要:
Diploma of Early Childhood Education and Careは、幼児教育に関わる業務の中でもリーダーやスーパーバイザー、マネージャーなどの管理職ポジションを目指す方には必須のカリキュラムです。National Quality Frameworkの内容を教育現場で実践するために、リーダーシップを発揮し、他の教育者を指導・サポートするための方法を学習することができます。
また、体型的な理論の学習とワーク・プレースメントの実施により、下記のような取り組みを行います。
教育指導者としてのスキルを磨く
自身の率いるチームが子どもたちに優れた教育・保育サービスを提供できるようにする
子どもたちの創造性を育むプログラムをデザインする
家族やコミュニティと良好なパートナーシップを築く
また、キャリアアップという視点から見れば、このコースの学習を通じて下記のような資質やスキルを向上させることができます。
プロフェッショナルとしての意識
リーダーシップ・スキル
コミュニケーション及び対人関係スキル
このDiploma of Early Childhood Education and Careを修了することで、幼児教育業界における管理職ポジションを得るために必要な国家資格を得られるだけでなく、キャリア形成に関する大きな自信とスキルを身につけることができるでしょう。
この資格を取得した卒業生は、保育士、リードエデュケーターと呼ばれる保育士チームのリーダー、スーパーバイザー、マネージャーなどの役割を担うことができます。また、更なるキャリアアップをお考えの方には、TAFEによる幼児教育の学士号を取得するというコースも用意されています。併せて、学齢期の子どもたちに関する教育スキルを身につけることができるCertificate IV及びDiploma、教育サポートに関するCertificate IV及びDiplomaなど、様々なキャリアアップにつなげることもできます。
また、幼児教育業界における見通しとして、政府は2021年までに400億ドル以上を育児支援に投資する予定をしており、それに伴い保育サービスを希望する家庭や子どもたちの数も増加し続けています。このように成長と拡大を続ける幼児教育業界で仕事をすることは、このコロナ禍の現在においても有望な選択と言えるでしょう。
こうした場面において、上述したCertificate Ⅲof Early Childhood Education and Careのみならず、Diploma of Early Childhood Education and Careなどのより専門性の高い資格を取得しておくことは、長期的な視点でキャリア形成をお考えの方にとっては、非常に有効な選択であると言えます。
受講に際しては、事前にWWCC(Working with Children Check)を取得し、必要なワクチンの接種と健康診断書の提出を行うことが求められます。
Diploma of Early Childhood Education and Careのコースにおいても、Certificate Ⅲof Early Childhood Education and Careと同様に、実際の職場における実習、ワーク・プレースメントを行う必要があります。座学による学習環境やシミュレーションでは再現できないような、より実践的な状況への対応をトレーニングするための機会がカリキュラムに組み込まれています。
ここでは合計で240時間のワーク・プレースメントが必要となり、近隣のEarly Childhood CentreやChild Care Centreなどご自身でそのを実施するための環境を手配して頂く必要があります。ただし何かお困りのことがあれば、TAFEによるサポートやガイダンスを受けることも可能です。
② 学習コースへの参加要件:
このコースに参加するためには、以下の条件を満たすことが求められています。
高校1年生レベルの英語の読み書きと会話ができること
基本的な計算スキル
プロフェッショナルとしての意識を高く持ち、誠実であること
高いモチベーション
リーダーシップを発揮し、他のメンバーを指導する意欲があること
スタッフと子どもたち忍耐力と献身的な姿勢
幼児教育に対してのパッションを持っていること
また、幼児教育の現場においては身体的な活動を要する場面も多く、重いものを持ち上げたり、CPR(Cardiopulmonary Resuscitationと呼ばれる床に膝をついて行う緊急時の応急処置作業)を行うために必要な体力や柔軟性が必要です。
Certificate取得コースと同様にこ床に設置された成人と幼児のマネキンに向かって2分間のCPRを途切れることなく行うことができるだけの身体能力があるかどうかが問われます。また、生命に危険が及ぶ可能性のあるような緊急事態に即座に適切な対応ができるかどうかも、評価の対象項目となります。これらの身体的要件を満たすことができない場合は、このコースを修了することができません。
③ コースに含まれる学習項目:
アボリジニ及びトレス海峡諸島民文化への理解促進と保護
異文化対応スキルの向上
子どもたちの健康と安全の確保
保育活動の実践
健康的な食事の管理
乳幼児のケアの仕方
子どもたちとのポジティブで敬意に満ちた関係性の構築
認定された学習フレームワークの活用と実践
安全且つ健康的な幼児教育環境の構築と維持
幼児期における子どもの総合的な成長と健康の促進
子どものクリエイティビティの向上
教育・保育サービスにおけるコンプライアンスの促進
協調性のある行動を促すための計画立案と実行
あらゆる子どもたちの受け入れに必要な戦略と体制の整備
子どもの主体性の促進
学習に役立つ情報の分析
子どもの学習と成長を促すカリキュラムの設計と実施
持続可能なサービス運営方法の確率
適切な教育・保育サービスを提供するための家族とのパートナーシップの構築
法律と倫理に準拠した活動
危険な状況の察知と対応方法
緊急時の応急処置
職場環境における健康と安全管理
業務プライオリティの整理
幼児期の子どもたちの成長の総合的なサポート
子どもたちに関する理解とその実践
チームを率いるリーダーシップ
実践の振り返りと改善
目 次
国際色溢れるインターナショナルな環境
国際的に競争優位な幼児教育システム
欧米諸国よりも経済的な生活コスト
幼児の脳の発達に有効な英語学習
子どもたちはみんなオーストラリアが大好き
クリエイティビティが向上する
自己肯定感が高まる
新しいスキルが身に付く
日本への感謝の想いが深まる
「褒めた理由を伝える」
「リスクをとらせる」
「子ども自身に判断をさせる」
「お手伝いをさせる」
「子どもの好奇心を解放する」
チェックリスト
日本と西洋の子供たちとの比較
高まる”遊びと幼児教育”の重要性
「2035年」の世界で求められるもの
オーストラリアの幼児教育が注目されている理由
政府による教育・サービス品質の確保
幼児教育制度の発展とNQFについて
子どものアイデンティティ形成に重要な「帰属・存在・生成」
政府によるチャイルドケアサポート
日本の幼稚園・保育園との違い
子どもの個性とチャレンジを大切にするアプローチ
オーストラリアの幼稚園や保育園の仕組み
その他のチャイルドケアサービスの種類
オーストラリアの義務教育・高等教育
年代別の教育制度と義務教育について
プライマリースクール(小学校)が始まるタイミングは?
National Quality Standard
① NQSを構成する7つの領域
② 評価制度と品質の格付け
③ 各Quality Areaについて
EYLF(Early Years Learning Framework)
① EYLFとは
② 中心となるコンセプト
③ フレームワークの構成要素
④ 5つの原則
⑤ 実践プロセス
⑥ 期待される学習成果
Certificate Ⅲ(概要)
① 概要
② 学習コースへの参加要件
③ コースに含まれる学習項目
Diploma(概要)
① 概要
② 学習コースへの参加要件
③ コースに含まれる学習項目
オーストラリアにおけるチャイルドケア事業発展の背景
① 社会インフラとして位置付けられたチャイルドケア事業
投資観点から見るチャイルドケア事業
① チャイルドケア事業の概要
② 投資家がチャイルドケア事業買収へ投融資を行った際の投資フロー
③ オーストラリアにおけるリース担保事情
④ 買収資金貸付、担保設定、利息支払いフロー
⑤ チャイルドケア事業買収契約と譲渡のフロー
⑥ チャイルドケア事業に関わるメンバープロファイル
⑦ 運営中のチャイルドケア事業のご紹介
⑧ チャイルドケア事業の主なリスク
業界の現状と今後の見通し
① チャイルドケアビジネスの現状
② 市場に影響を与え得る主な外部要因
③ 業界における企業形態
④ 需要の決定要因
⑤ ビジネスを成功させるためのポイント
⑥ 業界の今後の動向
Play & Learnとは
Play& Learnの教育アプローチとその適用事例
レッジョ・エミリア・アプローチの特徴
レッジョ・エミリア・アプローチの哲学
オーストラリアのレッジョ・エミリア
レッジョ・エミリアで用いられる原則とその適用事例
THRASSとは
THRASSの有効性とその適用事例
親子留学プログラム「Hello Kids」
「Hello Kids」とは
現地センターのご紹介
センターでの1日の過ごし方
先生の子どもへの接し方に関する日本との違い
コレクティブな遊びと学び
現地でのおすすめアクティビティ
Triple Pとは?
ポジティブな子育てのための5つのステップ