レッジョ・エミリア・アプローチは、第二次世界大戦後、イタリアのレッジョ・エミリア周辺の村に住む親たちと、自身も教師であったロリス・マラグッツィ氏によって開発された教育哲学です。
他者への尊敬や責任、コミュニティなどの概念を原則に置き、自己探求型のカリキュラムを通じて、子どもたちの興味に基づき、周囲からのサポートを得ながら、豊かな環境の中で探求と発見を行います。
レッジョ・エミリア・アプローチの特徴
レッジョの学校やクラスは、どれも同じではありません。施設のロケーションや受け入れる子供たちによって、さまざまにその形を変化させるのが特徴です。
イタリアにあるレッジョ・エミリアの町の外では、学校や保育園がレッジョ・エミリアのアプローチにインスパイアされ、コミュニティのニーズや地域の特性(山間部、川辺、都市部など)合わせてフレキシブルに対応しています。
レッジョ・エミリア・アプローチの哲学
レッジョ・アプローチは、子どもを中心としたアプローチを取り、エビデンスに基づいて設計されており、常に最新の科学的知見を盛り込みながら、日々変化する世界に合わせて変化していきます。ここでは、学校は誰もが自由に意見を述べ、新たな出来事と出会い、未知の発見をすることができる広場のようなものです。
オーストラリアのレッジョ・エミリア
オーストラリアやニュージーランドにおけるレッジョ・インスパイアのアプローチは、もともとイタリアで展開されていたオリジナルのレッジョ・エミリアの学校や他の幼児教育環境とも大きく異なります。そのエリア周辺の環境や子どもたちの特性に合わせて適応した形に姿を変えるのも特徴のひとつと言えます。
レッジョ・エミリア・アプローチは、さまざまな教育哲学をベースにしています。エリクソンやデューイ、モンテッソーリ、フレーベル、ブルナー、ピアジェ、フレイア、ビーバー、ヴィゴツキー、ガーデナーなど、多くの人々の教育哲学や理論がレッジョ・エミリア・アプローチに包括されています。
これまで、アプローチという言葉を用いてきましたが、メソッドとアプローチの違いは何でしょうか?メソッドは、いかなる環境や場所においても同じ方法で実施されなければなりません。学校や幼稚園がどこにあろうと、サービスやプログラムはコピー&ペーストされるのが基本的な考え方です。
レッジョ・エミリア・アプローチは、コミュニティの文化や地域の特性と密接に関係しているため、各学校は異なるサービスやプログラムを行う必要があります。なぜならそれぞれのコミュニティにおける子どもたちのニーズや興味は異なるからです。
子どもたちは、学習の方向性について周囲からある程度コントロールされる必要があります。そのため、私たちは子どもたちが自分の興味や好奇心に沿って、自由に世界を探求できるようなカリキュラムを準備する必要があります。
また、子どもたちには未知のものに触れ、身体を動かし、さまざまな音を耳にし、観察する経験を通して学ぶことが必要です。私たちが整えるべき環境は、様々な興味や学習スタイルに対応できるようなフレキシブルなものでなければなりません。
そして、子どもたちにはそんな環境を一緒に探索する自由と仲間が必要です。グローバルスカイ・エデュケーションの各センターでは、子どもたちが自然環境とのつながりを常常に感じられるように屋外施設環境を整備しています。
これにより、子どもたちはさまざまな年齢層の異なるスキルを持った子どもたちと自由に交流をすることができます。オーストラリアの太陽の光が降り注ぐ明るいスペースの他、バリエーション豊富な遊具も用意しています。
子どもたちには、自分のアイデアや個性を表現するための方法と機会が必要です。私たちは常に彼らの意見やアイディアに耳を傾け、子どもたちが作ったさまざまな工作物や作品を積極的に展示しています。
レッジョ・エミリアの哲学では、子どもはそれぞれに個性を持ち、周囲の環境やコミュニティ、他者との関係性、環境から多大な影響を受けると考られています。それぞれのセンターで実施されるサービスはユニークなものであり、そのコミュニティが生み出すひとつの産物であるとも言えます。
つまり、レッジョ・エミリア・アプローチを取る学習環境には、ふたつとして同じものはないということを理解することが重要です。こうして私たちはそれぞれの違いを奨励し、歓迎します。センターで提供されるサービスやプログラムは、そこで勤務する教育者や足を運ぶ家族や子供たち、そしてそれらが属するコミュニティの特性を反映しているのです。
レッジョ・エミリアで用いられている原則
ここからは、レッジョ・エミリア・アプローチにおけるそれぞれの原則を、グローバルスカイ・エデュケーションの現場で実践されている事例を織り交ぜながら、詳しくご紹介していきたいと思います。
Image of the child
100 Languages
Environments
Projected curriculum
Making learning visible
Partnerships
① Image of the child
私たちは、教育を行う立場の人間が子どもたち自身をどのように受け止め、捉えているかが重要であると考えています。レッジョ・エミリア・アプローチにおいては、子どもたちの可能性を最大限に伸ばすため、必要とされるあらゆる機会が与えられるべきだとされています。
私たちは、子どもたちを次のように捉えています。
強く、有能で、レジリエンスを持つ
可能性と好奇心に満ちている
積極的に知識を探求する
自発的に学ぶ
人間関係を構築することへの興味を持つ
コミュニティ(家族、教育者、友人、より広いコミュニティ)に影響を与え、また影響を受ける
他者との関わりを通じて、自らの知識を積極的に構築する
私たちは皆それぞれ、子どもという存在について、自分なりの考えを持っています。それは、自分の生い立ちや人生経験、性格、そして我々が行うトレーニングなどにより形作られます。
子どもたちを中心に据え、探究型のカリキュラムを適切に提供するためには、教育者自身が子どもにどのようなイメージを抱いているのかを理解することが非常に重要です。
例えば、子どもたちは教育者である私たちに依存しているという捉え方をしているならば、こちらからあらゆることを教えてあげることが私たちの役割だと思うかもしれません。
ところが実際には、子どもたちは自分の考えをしっかりと持っているものです。教育者はそれを一緒になって探っていくというアプローチをとることが大切です。つまり、子どもにはもともと備わった能力があり、好奇心が強い存在であるということを理解することが必要です。
私たちは、子どもたちを助け、すぐに答えを与えてしまいがちですが、時にこれは適切とは言えません。レッジョ・エミリア・アプローチを実践する教育者として、適切な教育スキルを身につけるには、常に自分の実践を振り返り、改善できることがないか探り続ける必要があります。
ロリス・マラグッツィが述べているように、子どもたちは誕生したその瞬間から、この世界とのつながりを築こうとしています。彼らの溢れるような好奇心は、あらゆる学びや能力を伸ばすためのエネルギーであり、無限の可能性を秘めた存在であることを忘れてはならないのです。
私たちは子どもたちが自らの好奇心とエネルギーを存分に開放し、楽しく学ぶことができるよう、様々な工夫を施した施設をご提供しています。自然光に溢れる明るい空間、彼らの興味を惹くような仕掛けを設置したコーナースペース、オーストラリアの暖かい日差しを受けながらのびのびと外遊びができるガーデンなど、幼児教育に最適な環境と設備を常に模索し続けています。
同じ遊び道具でも、子どもたちによってその使い方は様々です。
私たちは子どもたちがそれぞれに異なる考え方やアイディア、特性を持っていることを理解する必要があります。
私たちの過去の経験や知識、固定観念を当てはめて、一方的な指導や教育を行うことは、彼らの無限の可能性を育む上で、効果的とは言えません。
子どもたちがどんなことに興味を示し、どんなスキルを秘めているのか、私たち教育者はそれらを常に注意深く観察し、そっと傍でサポートをする姿勢が大切であると私たちは考えています。
今日はみんなで鏡を見ながら、粘土を使って自分のアイデンティティを探す旅に出ました。
子どもたちは、自分の顔の特徴や、それを粘土で表現するにはどうすればいいのか、子どもたち同士で話をしていました。
中には、自分の顔ではなく、全く別のものを作る子もいましたが、それでいいいのです。
あくまでも子どもたちが自分たちの意思で、自由にクリエイティビティを発揮することが大切です。こうした粘土遊びは幼少期の子どもたちの指先の感覚と筋肉を発達させ、視覚と触覚の連携を高めることができるのです。
② 100 Languages
子どもたちは、自分を表現したり、周囲の出来事への意味づけ、そして他者を理解するために、たくさんの「言語」を使っています。また、教育者は、子どものクリエイティビティや芸術的表現の重要性を認識しておく必要があります。
レッジョ・エミリア・アプローチでは、さまざまな方法を用いて彼らに学習の機会を提供します。多感な年代の子どもたちは、絵の具やダンス、音楽、物語、粘土、詩、人形劇など、様々な表現方法としての言語を学ぶのです。
子どもたちは、自分の考えを表現するために「100の言語」を持っています。その中には、絵画や彫刻、演劇などの象徴的な言語表現も含まれます。私たちは、子どもたちの学習と成長をサポートするため、日常生活の中にこれらを取り入れることが必要です。
マラグッツィは体系的な教育法としてこのレッジョ・エミリア・アプローチを残してはいませんが、彼のフィロソフィーが込められた「100の言葉」は、レッジョ・エミリア教育の理念を象徴するものです。「100の言語」とは、子どもたちが自分たちが住むこの世界とコミュニケーションを図り、学ぶためのさまざまな表現方法であり、抽象的そして象形的なアイデアを具現化する手段です。
話す・書く・動く・描く・描く・彫刻・影絵・コラージュ・音楽など、これらの表現方法は、あらゆる体験から知識を構築しようとする子どもたちの並外れた可能性を示すメタファーなのです。
レゴ作品はアートの一種であり、子どもたちはクリエイターやストーリーメーカーになれるのです。
子どもたちは、レゴを使って自由なスタイルを作り、創造力、想像力、自己表現力を発揮することができます。
レゴで遊ぶとき、子どもたちは思う存分冒険することができ、新しいアイデアを試し、試し、作り上げることができます。
今日は「色」をテーマにした実験の日。
どうしたら自分が好きな色を作れるのか、
どんなものが描けるのか、
クラスのみんなで試してみました。
自分だけの色を探して、
子どもたちの想うままにアイディアを表現してもらいました。
グループのお友達同士で何を描いたのか、お互いに興奮しながら話していました。
こうした取り組みは彼らの協調性を高めるのに効果的であると共に、子どもたちの純粋なアイディアを形にする良い方法です。
トドラークラスの子どもたちは最近、昆虫に興味を持っている様子。
彼らの好奇心をサポートするため、Ferlicity先生は昆虫の型取りのアクティビティを企画し、木の丸太や石、種のさやなど、自然の素材を集めて彼らが遊べるように準備をしました。
大人からすれば一見普段の遊びに見えるこれらの取り組みも、子どもたちにとっては自分の内側にある世界と、この外側にある世界をつなぐコミュニケーションをつなぐ、そんな意義深い体験なのです。
大人の知識と経験だけで、彼らのアイディアを制限するのではなく、何を表現しようとしているのか、どんなことに興味を持っているのか、常に彼らの言葉に耳を傾けることが大切であると、私たちは考えています。
③ Environments
物理的環境の整備はレッジョ・エミリア・アプローチにおいて極めて重要であり、言わば子どもたちとっての「第三の教師」のような存在です。
子どもたちが日々を過ごすスペースを効果的にデザインすることで、新たな出会いやコミュニケーション、そして他者との関係性を促進することが可能になります。
これらの空間デザインや設備は一貫した美的感覚のもとで設計され、それぞれが学習に役立てるための目的を持ち、きちんと整理されている必要があります。
具体的な例を挙げるならば、下記のようなイメージです。
自然光を採り入れ、美しさに満ちた環境
自然素材を多く用いたオープンスペース
子どもたちが自分の興味のあることを深く探求できるようなコーナーの設置
他者とのコラボレーションやコミュニケーションを促進させるような空間設計
ハイクオリティな道具や素材の提供
子どもと大人が共同作業できるエリア
観葉植物などの緑に溢れた環境
イタリアの中央広場のようにオープンで、キッチンが見えるようなクラスルームの配置
地域のローカルコミュニティの人々がアクセスしやすい設計
エントランスには鏡や写真、子どもたちの作品を配置し、子どもと保護者の興味を惹くような内装
さて、上記に示したような環境が整備できたら、次は教育者の役割を明確にする必要があります。
ファシリテーターとしての教育者:
子どもたちの成長や発達、学習の機会を導く存在となること
研究者としての教育者:
子どもたちの学習プロセスに寄り添うこと。常に新しい教え方や子どもとの接し方を学ぶためにオープンな姿勢を持つこと
観察者としての教育者:
子どもたちがどんなことを学んでいるか、どんなことを表現しようとしているのか。常に注意を払い、彼らに心を開くこと
アクティブリスナーとしての教育者:
子どもたちと深い関係を築くために常にオープンであること。子どもたちと教育者がお互いのことをしっかりと理解できるように努めること
家族と連携したパートナーとしての教育者:
子どもたちの教育と保育のため、家族と良好なパートナーシップを築くこと。
このような素晴らしい公園に隣接していることは、何と幸運なことでしょう。
子どもたちは、自分の周りの世界について学ぶことが大好きで、疑問や不思議に思うことがたくさんあります。
私たちは、インタラクティブ・ボードを使ったリサーチやバグハントなど、さまざまな手段で子どもたちの興味を引き出します。
センター内の各クラスに隣接するエリアでのガーデニングを通じて、子どもたちの運動能力を鍛え、自然との触れ合いを図ることができます。
自分の手で植物の種を植え、土をすくい、植物に水をやることで、基礎体力の向上と、集中力や学習能力の向上につなげることができるのです。
④ Projected curriculum
テーマをもって研究を行うということは、実際に自分で体験をすることが学びにつながるという考え方がベースになっています。グループで話し合い、さまざまな視点からアイデアを練ることは、子どもたちの理解と学びを深める良い方法です。
通常、こうした研究活動は数日から数ヶ月にわたって行われます。子どもたち自身のアイデアや問題意識などをもとに、テーマを設定することも有効です。例えば、子どもたちが日々の生活で目にする影や光の反射、雨の様子など、あらゆるトピックに基づいてテーマを設定することができるはずです。
すべての学習は、子どもたち自身が持つ興味や好奇心、興奮から始まります。彼らの好奇心を刺激するのは、我わらにとっても楽しくエキサイティングな体験となることでしょう。子どもたちが、どんなことにワクワクしているのか、注目してみましょう。
例えばあるクラスでは、真冬にクラスの本棚にクモが這っているのを見つけたことをきっかけに、クモについて詳しく調べることにしました。子どもたちの興味からヒントを得て、この設定したテーマに数学や科学の学習をうまく織り込むプログラムを準備しました。
このように子どもたちとのインタラクティブな関係性から開発されるカリキュラムでは、下記のような取り組みが大切です。
- すべての参加者は研究者としての自覚を持ち、テーマについての理解を深めるために協力すること
- 研究テーマは、あらかじめ用意された画一的なカリキュラムではなく、子どもたちの興味や質問をもとに設定すること
- 子どもと教育者、保護者が協力をして研究を進めること
レッジョ・エミリア・アプローチでは、教育者は単なる子どもたちの指導者ではなく、子どもたちとの共同学習者であり協力者でもあると考えられています。グローバル・スカイ・エデュケーションでは、カリキュラムの設計やプロジェクトワークにおいて、下記のような探究プロセスのサイクルを適用しています。
こうした子どもたちの探求プロセスの可能性を広げるために、’probocation(挑発・扇動)’という概念が用いられています。
Probocationとは、子どもたちの探究心や新たな発見を促す目的で設定された経験や活動のことです。これにより子どもたちの思考や議論、質問、興味、創造性、アイデアの幅を広げることが可能になるのです。
教育者はprobocationを意識して空間や環境をデザインし、子どもたちにとって刺激的で、興奮を呼び起こすような設備やリソースを導入し、さまざまな方法で彼らの学習をサポートすることが必要となります。
今日のKindy Communityは、唯一無二のドクター・ジョーと彼のサイエンスショーの訪問を受けました。
ジョー先生は、私たちの身の回りにある空気の存在を子供たちに考えさせ、試してもらい、その概念を素晴らしい科学実験で示してくれました。
また、ジョー先生は、火を燃やすには酸素が必要で、酸素は空気中にあることを説明してくれました。
その後、子どもたちは自分たちで科学実験をして、原因と結果について学びました。
ジョー先生は、光の概念を探るために、素晴らしいメガネを用意してくれました。このメガネは、私たちが裸眼で見ることのできる白だけの光を構成する、すべての虹色を見ることができます。
ガーデニングは子どもたちにとって、たくさんの学びを得られるプロジェクトです。
植物を育てるには自然の恵みと、それらを世話する人の努力、そして時間が必要です。これらを身を持って体感し、その恩恵として果物や野菜を自分で収穫し、味わうことは子どもたちにとって大変貴重な経験となるでしょう。
Southport Child Care Centreでは、敷地内にある広いガーデンを活用して、こうしたプロジェクトを毎年行っています。
今週は、光をテーマにみんなで研究を行っています。
光が持つ透明性という不思議な性質について、子どもたちはどうしたら光の色を変化させたり、さまざまな場所に反射させることができるか、お互いにアイデアを出し合いました。
ひとつのテーマに沿って、子どもたち主導でこうした研究を行うことで、彼ら自身の能動的な学習姿勢を引き出すとともに、協調性と自己主張の仕方を徐々に学んでいくことができます。
⑤ Making learning visible
レッジョ・エミリア・アプローチにおいては、子どもたちの作品や研究、表現活動を記録する重要性を説いています。それは下記のような理由からです。
子どもたちの学習による成長を祝うため
家族や地域社会と共有するため
子どもたちの声を紹介するため
子どもたちが自分のアイデアを深く探求し続けられるようにするため
子どもたちの居場所やアイデンティティを守るため
振り返りの機会を設けるため
子どもたちや保護者、コミュニティに向けた教育者からの説明責任を示すため
学習プログラムの透明化により、教育者自身が取り組みを振り返る機会を設けるため
教育者の役割は観察者であり記録者であると同時に、子どもたちの活動をサポートするファシリテーター、さらには共同学習者でもあることを認識しなければなりません。教育者が子どもたちの学習を促進するための良い方法は、子どもたちがアイディアや行動の幅を広げられるような問いかけをすることです。
また、彼らの研究活動に関する本や資料を提供し、子どもたちは興味を持つものを自分自身で選択してもらいます。常に子どもたちを観察し続けることで、一人一人の子どもたちとどのようにコミュニケーションを図るべきか、教育者自身が探求し続ける姿勢も大切です。
教育者は自分の経験や知識だけに頼るのではなく、子どもたちとのやり取りや学習の様子を音声や映像で記録することも効果的な方法です。子どもたちがどのようなことを発言したり、友達と議論しているのかを記録したり、子どもたちの活動や思考、表現活動は、教師が注意深く観察し、可視化する取り組みが必要です。
グローバルスカイ・エデュケーションでは、こうした子どもたちの作品を積極的に記録し、共有を図っています。
一人一人の子どもたちの学習日誌:ここには、子どもたち一人一人が体験した学習プロセスが記載されています。彼らの日々の学習活動を記録し、成長を祝福するための取り組みです。
スマートフォンApp「Story Park」:Story Parkを用いて、家族と教育者とのインタラクティブなコミュニケーションを可能にしています。家族だけが閲覧可能でクローズドなSNS環境を整備し、子どもたちのセンターでの日々の活動状況を画像や動画、テキストを交えて共有しています。
カリキュラム計画:教育者の振り返りの機会を設け、新しいカリキュラムのアイデアやプランに関するマインドマップを共有することができます。
マンスリーニュースレター:各センターのダイレクターが毎月家族に郵送をしています。
ファミリーフォーラム:年間を通じた研究プロジェクトの概要がクラスで共有されます。
保護者面談:子どもたちの学習日誌をもとにコミュニケーションを図ります。
パネル展示:子どもたちの学習成果を記録したパネル。
Facebookページ:各センターが日々の取り組みを発信しています。
上記の取り組みのように、子どもたちの活動を可視化し、振り返りの機会を設けることは大切です。これには次のような意味合いがあります。
子どもの学習と進歩について家族とコミュニケーションを図る
子どもたちの学習プロセスにおけ成長の度合いと、それを阻害する要因を見極める
追加のサポートを必要とする可能性のある子どもを特定する
学習環境や指導方法を評価する
計画的な学習プログラムの構築。
では、いったいこのような取り組みは、誰のために必要なものなのでしょうか?
まずは、家族とコミュニティです。レッジョ・エミリア・アプローチの原則にあるように、私たちは保護者やコミュニティを子どもたちの学習プロセスに参加してもらうことが必要であると考えており、そのためにあらゆる記録や共有を行っています。そして、保護者がこれらの情報にアクセスできる方法を提供し、積極的に彼らが関与し、コミュニケーションを図ることができるような環境を整備することが重要です。
次に、これらは子どもたち自身のために必要であると考えています。 私たちは、子どもたちが学んだ内容を、彼らがさらに発展させることができるように、彼らの学習プロセスや創作物を記録・共有しています。これらをセンター内に展示する際には、子どもたち一人ひとりがアクセスしやすいような場所に設置しています。このような記録や展示を通して、子どもたちは自分のアイデアやイメージが自分の周りの物理的な空間に影響を与えていることを実感することができます。
最後に、これらの取り組みは教育者である私たち自身にとっても重要であることを認識する必要があります。記録を行うことで、子どもたちの学習における私たちの役割を振り返ることができます。子どもたちがどんなことに興味を持っているのかを把握し、彼らの理解度を理解することにも役立ちます。こうして子どもたちの学習をさらに効果的にサポートすることができるようになるのです。
前述したEYLF(Early Years Lerning Framework)でも掲げられている遊びをベースとした学習という概念にあるように、子どもたちが創作したアート作品や彫刻など、日々の遊びや学びのプロセスを可視化し、讃えられるような取り組みを行うことが重要です。
子どもたちが自分自身をどのように捉えているのかを知るのに、セルフポートレートを描いてもらう取り組みは有効です。
子どもたちは鏡を見ながら、創造力を働かせて、好きなように自分の自画像を描いてもらいました。
自分を見つめること、そして自分で自分を描くこと。クラスの子どもたちが行ったこれらの取り組みを壁に展示すると、子どもたちはお互いに絵に興味津々の様子。
自分の絵と他の子の絵がどのように違うのか、自分が他のことどのように違うのか、この取り組みを通じて彼らは何かを感じ取ったようです。
保護者の皆様の多大なご協力のお陰で、子どもたちの記憶に残るような素晴らしいDress Up Dayイベントを実施することができました。
この日、子どもたちは想い想いに自分の好きなドレスやコスチュームに身を包み、記念撮影をしました。
どうしてその衣装が好きなのか、自分なりの言葉でお互いに伝え合うことで、自分と相手の個性や考えを尊重する姿勢を学ぶための良い機会となりました。
私たちはこの日の様子を写真に納め、センター内のみんなに見える位置に飾ることにしました。
後から子どもたちが写真を見てこの日の出来事を振り返った時に、自分がこの地域社会のコミュニティに属しているというアイデンティティを彼らが少しでも感じてれたら嬉しいですね。
幼児期の子どもたちは、日々著しいスピードで成長していきます。
彼らがセンターでの活動を通じて、どのような学びを得たのか、どれくらいの変化を遂げているのか、私たちはできる限り記録に残し、子どもたちや家族と共に共有できるようにしています。
壁に飾られたひとつひとつの展示を見るたび、その時の記憶が蘇り、子どもたちと共に過ごす時間の大切さに気付かされる毎日です。
⑥ Partnerships
グローバルスカイ・エデュケーションのセンターでは、家族や地域のコミュニティに対してその活動をオープンにしています。こうすることで子どもたちが活動する姿を見てもらうための機会を設けています。
家族が子どもたちの学習プロセスに積極的に関与することで、より有意義なカリキュラムの作成を行うことができるようになるのです。
家族の価値観や文化的背景、コミュニケーションのスタイルを理解することは、子どもたちの学習プロセスに家族が積極的に参加できるような体制を整備するために役立ちます。これらの継続的な取り組みが、家族や地域社会と教育者の間の信頼関係を築くことにつながります。
これらの学習プロセスを効果的にプランニングするには、必要な情報をきちんと収集し、事前準備を行うことが大切です。教育者と家族が子どもたちに積極的に関与し計画的なカリキュラムを提供することにより、子どもたちの遊びや学びの幅を広げ、彼らの思考や知識に新たな刺激と洞察を与える機会を設けることができます。
そこでグローバルスカイ・エデュケーションの各センターでは、下記のような取り組みを行っています。
クラスに家族を招待し、子どもたちの遊びや学びについて一緒に考える機会を設ける
教育者は各家庭との個別に面談を行い、パートナーシップの向上を図る
一年に一度、ファミリー向けイベントを行い、子どもたちの活動や取り組みを紹介する場を設ける
家族が子どもたちの学習プロセスに参加できるよう、絵本の読み聞かせやプロジェクトに参加したり、家族が主催するデモンストレーションやワークショップに子どもたちが参加できる機会を作る
私たちのセンターでは、子どもたちとともに学びを深めるため、あるエキサイティングな "New Beginnings "プロジェクトが進行中です。
そこで私たちスタッフは、このプロジェクトの取り組みやプロセスを共有するため、ビジョンボードを作成しました。このビジョンボードを使うことで、子どもたちとその家族、そしてセンターを訪れる地域の人々とも内容を共有したいと考えています。
お近くにお住まいの方は、ぜひセンターまでお越しになってご覧ください。このビジョンボードには、「あなたのお子さんはどんなアイディアを持っていますか?」「プロジェクトについて何か質問はありますか?」「あなたが好きなもの、お子さんが好きなものはありますか?」様々なコミュニケーションのきっかけを作る問いかけが掲載されています。ぜひ、ご自由にホワイトボードにメモを残したり、子どもたちとお話をしたり、StoryPark(モバイルSNSアプリ)を使って我々スタッフとコミュニケーションを図りましょう。
雨の日に外で遊べないと嘆く前に、この状況をうまく利用して子どもたちに遊びや学びの機会を与えることは、工夫次第でいくらでも可能です。
絶え間なく空から降り注ぐ雨を見て、子どもたちが雨がどこから来るのか不思議に思うのは当然です。
そこで私たちは、テクノロジーを駆使してレーダーを見せながら、どれくらいの雨が今降っているのかについて調べてみました。子どもたちは、気象局の雨マップに特に興味を示し、教室にあった綿や水彩絵の具を使って、雨の日を意識した創作を行いました。
また、レッジョ・エミリアのアプローチにヒントを得て、プロジェクターを使った遊びも取り入れてみました。子どもたちは、視覚や聴覚、触覚を駆使して、教室の壁に表示された様々な天候の様子を見ながら、とても興奮して楽しそうに感想を伝え合っていました。
リサイクル工作プロジェクトにご協力頂いた、ご家族の皆様からの温かい支援とお気持ちに、心から感謝を申し上げます。
子どもたちはこれらの材料を有効的に再利用して、自分たちのアイデアや創造物に命を吹き込むために、熱心に取り組んでいます。
目 次
国際色溢れるインターナショナルな環境
国際的に競争優位な幼児教育システム
欧米諸国よりも経済的な生活コスト
幼児の脳の発達に有効な英語学習
子どもたちはみんなオーストラリアが大好き
クリエイティビティが向上する
自己肯定感が高まる
新しいスキルが身に付く
日本への感謝の想いが深まる
「褒めた理由を伝える」
「リスクをとらせる」
「子ども自身に判断をさせる」
「お手伝いをさせる」
「子どもの好奇心を解放する」
チェックリスト
日本と西洋の子供たちとの比較
高まる”遊びと幼児教育”の重要性
「2035年」の世界で求められるもの
オーストラリアの幼児教育が注目されている理由
政府による教育・サービス品質の確保
幼児教育制度の発展とNQFについて
子どものアイデンティティ形成に重要な「帰属・存在・生成」
政府によるチャイルドケアサポート
日本の幼稚園・保育園との違い
子どもの個性とチャレンジを大切にするアプローチ
オーストラリアの幼稚園や保育園の仕組み
その他のチャイルドケアサービスの種類
オーストラリアの義務教育・高等教育
年代別の教育制度と義務教育について
プライマリースクール(小学校)が始まるタイミングは?
National Quality Standard
① NQSを構成する7つの領域
② 評価制度と品質の格付け
③ 各Quality Areaについて
EYLF(Early Years Learning Framework)
① EYLFとは
② 中心となるコンセプト
③ フレームワークの構成要素
④ 5つの原則
⑤ 実践プロセス
⑥ 期待される学習成果
Certificate Ⅲ(概要)
① 概要
② 学習コースへの参加要件
③ コースに含まれる学習項目
Diploma(概要)
① 概要
② 学習コースへの参加要件
③ コースに含まれる学習項目
オーストラリアにおけるチャイルドケア事業発展の背景
① 社会インフラとして位置付けられたチャイルドケア事業
投資観点から見るチャイルドケア事業
① チャイルドケア事業の概要
② 投資家がチャイルドケア事業買収へ投融資を行った際の投資フロー
③ オーストラリアにおけるリース担保事情
④ 買収資金貸付、担保設定、利息支払いフロー
⑤ チャイルドケア事業買収契約と譲渡のフロー
⑥ チャイルドケア事業に関わるメンバープロファイル
⑦ 運営中のチャイルドケア事業のご紹介
⑧ チャイルドケア事業の主なリスク
業界の現状と今後の見通し
① チャイルドケアビジネスの現状
② 市場に影響を与え得る主な外部要因
③ 業界における企業形態
④ 需要の決定要因
⑤ ビジネスを成功させるためのポイント
⑥ 業界の今後の動向
Play & Learnとは
Play& Learnの教育アプローチとその適用事例
レッジョ・エミリア・アプローチの特徴
レッジョ・エミリア・アプローチの哲学
オーストラリアのレッジョ・エミリア
レッジョ・エミリアで用いられる原則とその適用事例
THRASSとは
THRASSの有効性とその適用事例
親子留学プログラム「Hello Kids」
「Hello Kids」とは
現地センターのご紹介
センターでの1日の過ごし方
先生の子どもへの接し方に関する日本との違い
コレクティブな遊びと学び
現地でのおすすめアクティビティ
Triple Pとは?
ポジティブな子育てのための5つのステップ